何でもそして何にでも描く小川憲一豊実(おがわけんいちほうじつ)

1-車に夫が絵を描いた日のこと
夫.小川憲一は、どんな場所で
も「キャンパス」にしてしまう人
です。
ある日、長年乗ってきた車の横に、
突然スケッチブックを置くように
絵を描きはじめました。
淡々と筆を動かす後ろ姿を見な
がら、
「この車と一緒に走った家族の
時間」
「展示会のために全国を回った
日々」
そんな思い出が少しずつ絵の中に
溶け込んでいくようでした。
夫は油彩画.水彩画.日本画.水
墨画と幅広く描き、キャンバス.
和紙.木の板など、素材を選ばず
に作品を生み出します。
夫の作風についてはこちらも
どうぞ:
「なんでも描く絵描きです」
「エルビスとリサマリー愛に生きた父の姿」えかきのつまも心にしみる。 | マリアイネスえかきのつま
🎸 エルビスとリサマリ ― 愛に生きた父の姿 この作品は、夫・小川憲一豊実が私の誕生日に描いてくれた一枚です。若き日のエルビスが、愛娘リサマリを優しく見つめ…
2-傷を隠すため
の”即興アート”

実はその車、ある時つまの私が
ガ-ドレ-ルにぶつけてしまい、
穴まで開いてしまいました。
ネットで修理方法を調べ、なんと
かしょうと頑張ったのですが...ど
うにもなりません。
そこで、
「もう、絵で隠してしまう?」
という話になり、夫がスッと筆を
取りました。
良いような、悪いような...(笑)
でも絵を描いてからは、スーパ-
で買い物をしていても遠くから
「見られている」のが分かるほど目
立つ車に。
保育園帰りのバスの中から孫が
「バ-バ-どこ?」と探している時
も、この車のおかげでみつかるほ
どでした。
3-そして、車とのお別れ
走行距離5万キロ走ってた中古車として
迎えたこの車も、気づけば25万
2000キロを超えました。
子どもたちの成長を見守り、家族
を乗せ、作品を運び、南米の友人
たちとも走った車。
ついに手放す日が来ました。
レッカ-車に乗せられて遠ざかっ
ていく姿を見送ると、思いのほか
胸が熱くなりました。
絵ごと旅立つその姿が、少し寂し
くもあり...。
でも夫は最後に笑って、
「この車に絵を描けて、よかった」
と言いました。
絵描きにとって、”描くこと”が祈り
のようなものなら、
この車もまた、夫の筆によって「もう一
つの作品」として旅立ったのだと
思います。
思い返すと、この車はいつも私た
ちの人生に寄り添っていました。

最後にガレージの前で写真を撮っ
た時、 夫がぽつりと
「よく走ってくれたなぁ」 とつぶやきました。
私はその横顔を見ながら、
“あぁ、本当にありがとう”
という気持ちで胸がいっぱいになりました。

新しい生活の区切りとして、
この小さな「さよなら」も
私たちの物語の一ページになりました。
■ 夫の作品はこちらでも紹介しています https://www.instagram.com/mariainesmatsunoshita/ https://x.com/m_matsunoshita/https://note.com/m_matsunoshita
小川(松ノ下)マリアイネス拝




