アルゼンチンでの葉タバコ栽培 両親の苦労を思い出す

葉タバコ栽培と聞いて思い出すのは、「とにかく大変だった」ということです。

子供の頃も手伝いましたし、結婚後に家族と同居していた頃も父は葉タバコを栽培していました

父が育てていた葉タバコは、日本で見かけるものとは少し違い、とても大きな葉をつけていました。

収穫の時期になると、一枚ずつ手で折り取っていきます。

その作業を続けていると、葉から出る脂が服や手につき、ベトベトになります。

今でもその感触をよく覚えています。

葉タバコはナス科の植物で、種は驚くほど小さく、1グラムの中に約1万2千粒も入っています。

花も美しいのですが、葉に栄養を集中させるため、花が咲くとすぐに摘み取ります。

大きな葉は長さ70センチ、幅30センチほどにも成長します。

 

 

 


すべてが手作業だった時代

 

私の記憶では、収穫した葉タバコはまず選別されます。

その後、1メートル50センチほどの針金に一枚ずつ刺していきます。

収穫は朝早く、まだ太陽が顔を出す前から始まります。

そして一日中、ひたすら葉を刺し続けるのです。

夕方になると、今度は乾燥小屋へ運びます。

父は高い梁の上に立ち、ロープを使って葉タバコを一本ずつ吊るしていきました。

足場も決して良くありません。

今思えば危険な作業だったと思います。

小屋の中で葉は少しずつ黄色く変わりながら乾燥していきます。

しかし私は、その匂いがどうしても好きになれませんでした。

子供だったからかもしれませんが、大人になった今でも苦手です。

そのせいか、学生時代にバスや地下鉄でタバコの匂いを嗅ぐと気分が悪くなりました。

一方で、「タバコを吸う男性は格好いい」と話す友人もいました。

人それぞれ感じ方は違うものですね。

 

 

 


乾燥から出荷まで

 

ちょうどよく乾燥した葉タバコは、今度はロープで下ろされます。

一本の針金から葉を外し、適量ごとに束ねます。

その束を仕切られた保管部屋へ丁寧に積み上げていきます。

乾燥し過ぎてもいけませんし、温度管理も必要です。

状態を見ながら寝かせ、最終的に出荷されます。

私は一度だけ、父と弟と一緒に工場へ行ったことがあります。

遠く離れた大きな工場にはたくさんの人がいて、忙しそうにトラックから葉タバコを下ろしていました。

幼かった私は、その光景だけを今でも覚えています。

当時はほとんどが手作業でした。

本当に大変な仕事だったと思います。

 

 

 


両親への感謝

 

葉タバコと聞くと、まず思い出すのはベトベトになる脂です。

服についた汚れを洗うと、水が緑黒くなりました。

そんな重労働を両親は毎日続けていました。

今ではタバコを取り巻く環境も大きく変わりました。

喫煙する人たちは肩身が狭くなり、街角の喫煙所で一服している姿をよく見かけます。

時代は変わりました。

けれど私にとって葉タバコは、両親の苦労そのものです。

日本から遠く離れたアルゼンチンへ移住し、慣れない土地で働きながら私たちを育ててくれました。

きっとホームシックになったこともあったでしょう。

故郷へ帰りたいと思ったこともあったはずです。

私は一度だけ、母がミシンの前で静かに涙を流している姿を見たことがあります。

詳しい理由は聞きませんでした。

けれど今になって思います。

父についてアルゼンチンへ渡ると決めた母にも、たくさんの葛藤や寂しさがあったのだろうと。

両親が異国の地で流した汗と涙があったからこそ、今の私があります。

感謝の気持ちしかありません。

 

 

 


結び

 

夢がすべて叶う人生ではなかったかもしれません。

それでも家族を守り、子供たちを育て上げた両親の人生は、十分に幸せな人生だったのではないでしょうか。

私もまた、その背中を思い出しながら生きていきたいと思います。

 

 

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投稿者

  • mary

    アルゼンチン生まれ育ちの日系二世の小川(松ノ下)マリアイネスです。
    19歳でえかきの小川憲一豊実(おがわけんいちほうじつ)と結婚して来年には金婚式を迎えます。お勤めの方たちの妻とは違いまして金銭的には色々あった人生です。しあわせだったか、しあわせでなかったかはあの世へ行く瞬間にしか分からないと母親がいってました。
    価値観は個々違いますが、自分ではしあわせだと思っております。
    喧嘩を一回もしたことのないご夫婦も存在しますが、私たちは毎日のように京都育ちのえかきとは意見は合わずその違いで議論になることは多々あります。
    このような絵描きの妻ですが、どうぞよろしくお願いします

    “The Painter’s Wife”

    小川(松ノ下)マリアイネス拝

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