「嘘じゃろう」と言われるたびに|肖像画と“本物”の私の話

個展や家に来てくださったお客様が、
壁に掛かった私の肖像画を見て、
よく足を止められます。
「これ、奥さんですか?」
そう聞かれて、実際の私を見ると――
「嘘じゃろう…」
思わず、そうつぶやかれることがあるのです。
絵の中の私は、少し若く、少し美しく、
どこか気品まであるように描かれている。
それを見たあと、今の私を見ると
驚かれるのでしょう。
けれどその場で、えかきは平然として言います。
「失礼なことを。きれいに描けますから。」
その言い方がおかしくて、
お客様も私も笑ってしまう。
でも私は思うのです。
これは、ただ美化しているのではなく、
えかきには、私がこう見えているのかもしれないと。
長年連れ添った人が描く肖像には、
皺や年齢ではなく、
その人へのまなざしまで入ってしまう。
だから「嘘じゃろう」は、
じつは褒め言葉なのかもしれません。
笑い話みたいでいて、
少し愛情のある話です。
画家と暮らしていると、
こんなことが、たまに起こります。


